童話2

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「北風と太陽」の寓話は、既に人口に膾炙しています。

 これから述べるのは、その後日譚です。

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 北風と太陽の前を、また外套を着た旅人が通りかかりました。

 北風は、性懲りもなく、旅人に冷たい風を吹き付けて外套を吹き飛ばそうとしました。旅人は案の定外套を吹き飛ばされまいと、しっかりと腕をくみ上げました。

 見かねた太陽は、旅人に暖かい光を浴びせかけて、旅人が自分から外套を脱ぐように仕向けようとしました。が、いくら暖かい光を浴びせかけても、旅人は身を固くして、一向に外套を脱ごうとはしません。

 太陽は、おかしいなあと思って振り返って北風を見ると、今度は、太陽が旅人に暖かい光を浴びせかけている間も、北風は旅人に冷たい風を吹き付けるのを止めません。なるほど、これでは、旅人が自分から外套を脱ぐことはあり得ません

 太陽は北風に言いました。

 「君が冷たい風を吹き付けるのを止めれば、そしてしばらく君が冷たい風を吹き付けることはないと旅人が信頼すれば、旅人は自分から外套を脱ぐから、すこし冷たい風を吹き付けるのを控えてくれないか」

 しかし、北風は太陽にこう答えました。

 「君はさっきから暖かい光を旅人に浴びせかけていたようだが、旅人は外套を脱ごうとしないではないか。君の軟弱な作戦は失敗したのだ。君こそもう私の邪魔をしないでくれ」

 そう答えると、北風は、前にも増して冷たく、強い風を旅人に吹き付けました。

 旅人は、外套を吹き飛ばされたら自分は凍え死んでしまうとばかりに、必死に抵抗を続けました。

 その間、旅人の横を通りかかった犬は吹き飛ばされ、馬も吹き飛ばされ、街路樹はぼきっと折れました。北風は、旅人が苦しそうな顔をするのが楽しいのか、太陽が心配そうな顔をするのが嬉しいのか、景気よく勇ましく冷たい風を旅人に吹き付け続けました。ついには旅人ごと吹き飛ばされてしまいました。旅人は体中が傷だらけになってしまいました。しかし、旅人は、必死の形相で外套を離すまいと抵抗しました。旅人は、ついに岩陰を見つけ、北風が吹きすさぶのを止めるまで、そこに隠れることにしました。

旅人は待っても待っても北風がやまないのでそこで、火をおこし暖をとることにしました。少しでも傷を癒さなければなりません。

しかし、北風は目ざとく火を見つけ、火をかきけしました。旅人は凍えながら、どんどん衰弱していきました。
北風は、出てきてごらん?風はやむよ。と旅人に声をかけます。旅人は、出て行く事もできずどうすることもできず 最後には凍えて死んでしまいました。
死んでしまった 旅人の体からは力が抜けはて、外套は易々と北風に飛ばされていきました。

北風は太陽に誇らしげに その外套をみせつけました。